電気楽器の嗜み。自己責任…とも言えるか。

IMGP0771 位相とはやっかいな物である。ライブではいろんな条件/状況が重なって「音抜けない」とか「音聴こえない」なんて事が起きるが、原因が位相の場合それを察知出来るミュージシャンはプロでも少ない。
しかしステージ上でアンプの出音やモニター等をチェックして「あぁ、これ逆相だな。」とスパッと対処できるエンジニア/オペレーターもまた少ない。マイク立てて後はブースから出て来ないなんてオペレーターにはそもそも位相チェックなんて観念も無いのだろう。

知らなくても解らなくても位相との闘いは存在する。本来ならばエンジニア、音響屋の領域だが自己防衛的にミュージシャンがその知識を得る事は無駄では無いのだ。しかしながら楽器としてのアンプは実にいい加減な物が多いのは疑いも無い事実。最初っからスピーカーが逆相でワイアリングされた物やEQだのプレゼンスだののスイッチをON/OFFする度位相がひっくり返る物だので溢れてる。一番始末が悪いのはベーアン等のラインアウトで、マスター前に割込んでるので回路的に1段少ない位相反転回路なんぞ鼻っからコストダウンで組んでないアンプが殆どだからスピーカーと逆相で出てるアンプがいっぱい有る。
この場合「このアウト逆相なので卓側でリバースお願いします。」ミュージシャン側の管轄だ。
そんな事も知らずに頭でD.I.にパラってサンズアンプ等でまたパラってマイクでも拾ってなんて位相ぐちゃぐちゃで鳴らして「3系統取ってる」なんて自慢気にしてる間抜けベーシストの何と多い事か。

上の画像はノイトリックポータブル・マルチチェッカーで、ポラリティ(位相)のチェックも出来る。
一度あの気持ち悪い逆相の音場を覚えてしまえば大抵耳で判断出来るが、始めての店なんかでよく解らないとき等はコレが活躍する。
特に近年は通販でP.A.システムを購入して素人ワイヤリングで鳴らしてるお店も多い(それはそれで素晴らしい事だと思う)ので注意が必要だ。

もちろん正相で鳴ってるからそれで良いなんて簡単な話しでは無いのだ。
意図的にと言うかセオリーとして逆相で鳴らす場合も多々有るのでいろんな知識が必要だ。

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お次は電源位相である。一般的な家電製品を使う時は電源位相なんて考えなくて良いように出来ている。が、アンプやラックマウントのエフェクター等は家電では無い。電源位相を気にせずに使っていると痛い目に会う。

最低限知っていなくてはいけないのが「コンセントには向きが有る」と言う事。

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このコンセントはどこの家にでも付いてるごく一般的な物。
扇風機を突っ込むのなら左右なんて気にしなくても良い。
が、よく見ると左右が同じでは無いことが解る。左がやや大きいのだ。これは楽器用等の電源ディストリビューターやテーブルタップでも同じ。大きい方がグランド側。だが日本の電設工事は全く持っていい加減で、そもそもアースだのグランドだのの観念が無い業者が多々存在するので見た目で判断するのは止めた方が良い。中の結線が逆になっていたりコンセント・パネルそのものが逆に付いてたりする場合がある。

それを簡単にチェック出来るのが上の検電ドライバーテスター。検電ドライバーは中に小さな電球が入っていて電気が流れると点灯する仕組みになっている。ドライバーの先をコンセントに突っ込み、ドライバーの背中の金属部分に触れる。
突っ込んだ方がホット(プラス)側だと人の身体はグランドと同じで電位差が生まれ通電するので豆球が点灯するのだ。
突っ込んだのがマイナス(アース/グランド)側だと電位差は生まれず点灯しない。

そして挿されるる側だけで無く、当然挿す側にも向きは有る。楽器等の音響/オーディオ製品の電源プラグには記しが付いている場合が多い。アキュフェーズの場合だとプラグにWの刻印が打ってある方がグランド側。それが小さなポッチだったりG(グランド側よっ)と書いてあったり、メーカーによって様々だが。
何も記しが無い物も沢山ある。通産省マークのどっち側なんてセオリーも有るのだが自分で調べて誰にでも解るようにマーキングしておくのがイチバンよい。

テスターを100vレンジにして片方をアンプ等の機器のアース部分(シールドやシャーシ等のグランド側)に付け、もう片方を自分の指先で触れる。次にコンセントを左右逆に差し替えて同じ事をやる。メーターの値が少なかった方が正解である。テスターのメーターが振れると言う事は本来ならアース/グランド側であるはずの部分と人の身体(グランド)とに電位差が生まれてるわけだから+−逆だと言うことになるのだ。

これを使う機材の分全てをやっておかないとグランド・ループが発生してブーンと鳴るノイズが発生したり、P.A.側とグランドが逆だとマイクに触れたら感電したりとなり、最悪の場合感電死する。海外の200V〜240Vでは感電事故は珍しいことでは無い。

電気楽器を使うならミュージシャンでも最低限のことは知っておいた方が良い。
アンプやエフェクターはエレクトリック楽器を扱う人達だけが使う非常にマニアックな物で
お手軽家電ではないのだから。