いつの時代も街のライブハウスがミュージシャンの登竜門であることは違いは無い。
初めて人前での演奏、初めてのステージ、初めてのスポットライト…。
私も子供の頃、当時大阪キタに在ったバーボンハウスのステージに立つ事が夢だった。大阪市立工芸高校の先輩だったギタリスト古川望氏の参加するバンド羅麗若(ラレイニヤ)を見に行った時に「あのステージに立ちたい!」の衝動が若かった私の音楽への動機の全てになった。
「キタのバーボン、ミナミのデューク」と言われた大阪の2大老舗も歴史を閉じて久しいが…。
16才の高校1年、先輩達に誘われ始めて出演した小さなライブハウス バハマ は多くの有名バンドを育てた伝説の店。楽器はほとんど生音だけの狭くて神聖なステージが私のミュージシャンとしての原点。
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時は流れ、どこへ行っても一番若造だった私も様々な体験、経験を積んで来た。
立派なP.A.常設の大きなライブハウス、ホール、体育館やスタジアムでのコンサート、TVやFMでの公開録音や放送。商業レコーディングも数知れず…。
宅録もピザケースと言われた初期型Macのパソコンベースのシーケンサーを覚えADATでの32ch録音からプロツールスへと進み、自宅で録ったテイクも商業レコーディングのトラックとして数多く残している。
そして今改めて思う事…。
何も知らない若造だった私にミュージシャンとしての作法を叩き込んでくれたライブハウスのオーナー、スタッフ達。人も店も新陳代謝し世代が代わり私の半分程の年齢の方達も増えて来た
若いP.A.エンジニアに告ぐ。もっと音楽を聞きなさい。
好きな音楽がなんであろうとクラシックのオーケストラやブラスバンドを生で聴いた事が無い者にサウンド・エンジニアが出来ると思っているのか?
君たちにとってストリングスとはシンセやサンプラーから出て来るあのヒンヒンした音しか知らんのか?
生の金管・木管の空気の振動を知らんのか?それでいいと思っているのか?
なんでもかんでもドカドカのキックにしてしまって、それで16ビートのシンコペが伝わるとでも思っているのか?
そもそも16ビートやカントリーやブルースを知っているのか?
君たちは卵で目玉焼きしか作れない料理人に金をだすのか?
ちょっと大きな店だとチーフとサブがいてステージでは若い方がせっせとマイクを立ててマルチに繋げている。チーフは卓の前に陣取り「トップは何チャンにしたー?」なんて声を飛ばす。
「ああ、またか…ダメだな、コイツも。」と私が思う瞬間である。
君等の上のもんが教えんのやったら私が教えてやる。
回線立ち上げ時の卓なんざサブに任せてチーフ・エンジニアがマイクを立てろ!
マイクを立てながらチューニングなんかをやってるドラマーの回りをウロウロして生音を聴け!
アンプの前にしゃがみ込んでギタリストやベーシストの生音を聴け!「耳がイカれる」なんて10年早いわ、そもそも耳なんて出来てないくせに。
生音も聴かずにいきなりマイクを通した音で「キックから下さーい」でドカドカの音しか作れんオマエ!「も少しローを締めて」のオーダーに卓のEQをいじくり回す前にマイクの位置を変えろ!
ドラムでもギターでも、ほんの数センチ離す、近づけるで欲しい周波数をキャッチすればそのEQは要らんのじゃ。
二言目には「生音を下げてください」しか言えんオマエ! ブレイクダウンも出来んようなヘッポコ野郎と一緒にするな。オフ気味にならんよに足りん周波数だけP.A.から出して補正するのがオマエの役目じゃ。私にチャンネル・リバースの指示を出させる前に「アンプの位置を変えましょう」と提案してみろ。店に泊まり込んででも自分の小屋の特性を徹底的に把握しろ。
多くの市販ベースアンプのラインアウトが逆位相で出ている事を知っているのか?
最近のマイクは最初っから逆位相だったりするのが混じってるの知ってるか?チェックしてからつかってるのか?
ステージ上のアンプの電源位相をどうやってもマイクがピリピリするのは店のシステムがおかしいからやぞ。アウトボードまで全部グランドループせんように差し替えて置かんかい!。
P.A.エンジニアとミュージシャンは出会い頭の関係であっても信頼で成り立つ物だ。
しかし、君達がチューニングも出来ないへっぽこギタリストや突然もの凄いレベルでピークを振り切るような信号を送ってくる奴を信用出来ないように、私もミュージシャンの作る生音を聴きに来ないエンジニアを信用しない。
「怖い」とか「ウザい」なんてほざいてないで勉強しろ。