Inner Bamboo Bass Instruments  Ultimate Comp II ”U-Ⅱ”

IMGP5436ツヤ消しのシックな黒い箱にCAJのアダプタが添えられて到着。
開けてみるといきなり黄色いクロスが登場!
貴金属等を磨く時に使う様な研磨剤付きかな?触ると指先がちょっとザラつく。 エフェクターに磨き用クロスが付属と言うのも珍しいが本体を見て納得。ツヤ消しブラックの頑丈なスチールケースにウッドパネルが貼ってあり、さらにはゴールドのエンブレム。仕上は非常に丁寧で気の弱い人は足蹴にバンバンふんず蹴るのを躊躇してしまいそうなくらいピカピカなのだ。贅沢仕上にクロスを添えるなんて制作者の強い想い入れと誇りを感じるね。

IMGP5443ツマミは6個とストンプ系コンプとしては多い。ここで一瞬嫌な予感が脳裏を横切る。日本製の良いとこでもあり悪いところでもある細かい設定は出来るが、どうやっても中途半端でなんか使う気にならない類かな? と。

ストンプ系コンプは補正的に使うより「コンプでっせー!今コンプ踏みましたよ!」な攻撃的な使い方をする方が多いと思うので対数比例方式のスレッショルドとアウトのツマミ2個なんて振り切った仕様で「オラッどうじゃ!ツパツパやろ!これが欲しいんじゃろがっ!」なんてのが使い易く判り易い。スタジオでの時間軸のコントロールやレベリング等の微妙な隠し味的な使い方よりプレイヤーの武器としてはシンプルな方が好まれる傾向がある。
IMGP5445

さてそのツマミの内訳は
1)スレッショルド
2)レシオ
3)アタック
4)リリース
5)レベル
6)SCEQ
となっている。
IMGP5438

プラ4dbラック系コンプ並みの充実ぶりだが、問題はその動作である。ツマミはいっぱいあっても思った通りの動作をしてくれなければ話にならない。

先ずはベースとアンプ間に繋ぐ一般的な接続で試してみる。

と……  え?  なんだって!

「!」だ。いや「!!!×100」くらいかな。
これは凄いペダルだぞ!ちょっとドキドキして来た。先ず持って原音に忠実なんて謳い文句は聞き飽きたが、効果がどうのと言う前に「キャラ変わってるじゃんよ。」ってのが常である。「どこが忠実やねん」言いたくなるもんなのだが………忠実だぁ、これは。
ストンプ系コンプでここまで原音のニュアンスを崩さず高い解像度の物は初めてだ。そう、音が荒れないのだ。
嘘っぱちなスタジオ・クオリティーなんてのも「はいはいはい…。」と聞き飽きたが、これは正真正銘のスタジオ・クオリティー! 原音のニュアンスもS/N比も100点満点。こいつは並のペダルじゃないぞぉ。

続いて各ツマミをいじくってみる。

コンプとしてのコントロールはスレッショルド、アッタク、リリースの三つ。先ず持ってストンプ系でリリースが付いているのはありがたいね。それぞれの動作は非常にに明確で「この効き具合はいいんだけど4弦解放が少しボヤけるので少しだけアタックを遅くしたい、いやほんの少しね…。」な時にアタックを1ミリだけ動かすとちゃんと効果として体感出来るのだ。これは驚異的と言って良い。
リリースも同じ感覚でほんの少しの微調整がちゃんと反影される。ラック系コンプでもリリースを速くすると歪みが生じる場合が多いが、コイツはそんなことは起こらない。ややこしいことは内部でやってくれて、プレイヤーは直感でツマミをいじれば欲しい効果が得られる。まったく素晴らしいコントロールだ。これ作った人、かなりセンスいいよな〜。

ちょっとスレッショルドを戻すと全体のバランスが崩れてしまい最初からやり直しってペダルがほとんどだけど、コイツは各ツマミともほんの少しにちゃんと応えてくれる。あまり好きな表現ではないがこの際言ってしまおう、ネ申コンプと。

出力レベルを決めるレベルツマミはゲイン不足になることはない。ストンプ系コンプで時々困るのはスレッショルドを控え目にすると出力レベルが足りないって奴。「おのれはファズかっ!」って言いたくなるなようなのも有るが、スレッショルドツマミの位置に関係無く十分な利得を得られる

私の場合アタックが相当強いのでダイナコンプやDOD280等のスレッショルドとレシオが連動している対数比例方式のコンプでは「このゲインでもう少し抑え込みたいんだけどな…。」と思うことしばしば。コンプとのフィーリングが合えば問題無いのだが、ほぼギターにフォーカスを絞った作りなのでなかなか上手くは行かない。スレッショルド・ポイントの可変幅が大きくても実際は最大値ではただ潰れる(歪みと共に)ばかりで使えないってのが多いがコイツは全然余裕で受け止めてくれる。
ギターでは副産物的にコンプのオーバーロードによる歪みがテイストになったりして良い場合もあるが、ベースの場合はヘッドルームをいかに広くとって有るかが大切になってくる。

ヘッドルームとは簡単に言うと0dbから上の話で、ミキサー等にも付いているレベルメーター等の赤の部分である。この部分が狭いと0dbを越えるピーク入力に対して歪み易いって事が言える。
クリーントーンで心地良くコンプレッションしたいベースに使うコンプではヘッドルームが重要なポイントなのである。なのでラックタイプのコンプのようにACがそのまま生えていたりAC/ACアダプターで内部動作の電圧が高いものが有利だったりする。コイツは通常のAC/DCアダプターだが消費電流が230mAと高めなので感覚では無く実感としてヘッドルームの広さを感じ取れる。

さて、すでに神と言っておきながらなんだが、ここからがこのコンプの神の領域である。
SCEQと言う聞き慣れないツマミ。これは凄い!天才だ!!惚れた!!!私が求めていた物が遂に手に入ったと言う感じである。いや本当に涙が溢れ出るほど嬉しい機能だ。

ラック系コンプには必ずと言って良いほど備えられているサイドチェイン。EQをインサートしてスレッショルドの感知周波数をコントロールする機能なんだけど、ステレオ・ジャックでYケーブルを必要としたりでけっこう面倒くさいワイヤリングが必要。それを簡易的にツマミひとつで、しかもベースにとって一番して欲しいことを簡単にやってくれるのだ。

IMGP5443内部ではややこしいことをやっているのだが、判り易く言うと特定周波数をコンプから逃がすのだ。
ベーシストなら必ずと言ってよい程体験しているであろうコンプの迷路で、
「欲しいコンプレッションまで効果を上げると低音も押さえ付けられてパキンパキンになってしまう…。」って言う例のやつ。

このコンプの魔の手から6段階に低音を救うことが出来るのだ。

これにはさすがにビックリして部屋中転げ回ったあげくラックの角に向こうズネを打つけて悶絶した。

繊細なアタックが得られるよう強めにコンプレッションさせても低音にはかかり難くして豊かなローが得られる。正に原音のキャラクターはそのままに、アタック成分だけコンプレッションして輪郭を浮き出させるなんてことが出来てしまう。これを神と言わずして何と言う!

地を這う低音でバンドをプッシュしながらもピック弾きのアタックは失いたく無いと言う、いろんなところがとんがった変なカタチのベースを操る低音魔人や、サンバーストのプレベにフラットを張りファットなボトムラインを紡ぎ出しつつもアタックはプクンと言わしたいファンキー野郎も。
パーカッシブなプレイでリズムを刻むスラップ専科にも、みんな「これが欲しかったんだよー!」と叫びたくなるSCEQ
ギタリストがソロのときに速弾きでフレーズをシャキッとさせたいがチリチリになってしまう…なんて時にも威力を発揮するんじゃないかな。

いやこれ、今後他のメーカーも真似してスタンダードな機能に成っちゃうんじゃないかな。

ハードにコンプレッションさせた攻撃スイッチ的な使い方にも、浅くリミッター的な補正としての使い方にも満足出来き、守備範囲の広さも群を抜いている。もちろんギターに使用しても素晴らしい効果が得られる。

正直今まで「コンプは何がいいですか?」と聞かれても「人それぞれだからね、試行錯誤するしかないよ。」と特定の機種は奨めなかったんだけど。

これからは一言「U-Ⅱ だね。」で決まり。
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