聖域なんだよ、わかってる?

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一般的なコンボ・アンプはアンプ部とエンクロージャーを一体化させた物で100w〜300wの物が多い。箱1個でポンと置けばスイッチを入れるだけですぐ音が出せる手軽で便利なタイプだ。
画像右はFender RUMBLE100で12インチユニット1発で軽量が売りな超お手軽アンプの代表。
しかし電源部がスイッチングの悲しさかなパワー的には額面通りの100wとは言いがたい。

 

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ベースアンプはギターに比べよりパワーを必要とするのでセパレート化した物も多く使われている。
コンボやビルトインに対してセパレートとかスタックと称される類いね。
ギターアンプの「マーシャルの3段積み〜」等が代表的なスタックのイメージかな。たいがいのライブハウスでもベーアンと言えばアンペグSVTが置いてある。
画像左はヤマハF100B。発売当時は「鈍感で眠たい奴だなぁ」と好きではなかったが、今使ってみるとなかなか良い。と言うか国産ベースアンプでは唯一まともに使えるアンプって感じ。とてもベースらしい音がすんなり出せる。スタック・アンプの利点としてはヘッド部はそのままでエンクロージャーだけを追加したり他の箱で鳴らしたりとステップアップが簡単に行えること。アンプのワット数が同じでも箱の形式やユニットの違いによって出音はまったく違う感じになるからね。

80年代に全盛を迎え今ではほとんど見かけなくなったのがコンポーネント・アンプだ。IMGP2840
TOTOを始めAORやL.A.サウンド全盛だった頃はギターもベースもかなりの人がコンポーネントを組んでいた。
コンポの利点はプリアンプ、パワーアンプ、エンクロージャー等をそれぞれ好みのメーカー、タイプから専用機を選択して組み合わせるのでより自分好みのサウンドを作り出しやすく、なおかつ専用機ならではのクオリティの高さが何と言っても魅力なのだ。
私も20歳の頃に使っていたアコースティック126がぶっ飛んで新しいアンプが必要になった時、アレンビックF-2Bプリアンプエレクトロボイスのスピーカー・ユニットと言う組合せに出逢ったのだ。
IMGP0388当初パワーアンプは然程良い物を使っていなかったが、爆風のメジャー・デビューと共に公演会場も大きくなって行きパワー不足に…。そこで憧れだったアムクロン(クラウンの輸出モデル名)やクレストと言った大出力の業務用アンプ(所謂P.A.用と言われる物)を使い出した。
さすがに大型パワー・アンプの威力は素晴らしく普通のベース・アンプでは得られないスピード感と歯切れの良さに「もうベースアンプは使えないなぁ…。」となってしまった。

しかし問題も有る。アメリカ製の大出力アンプは大喰らいなのである、そう、消費電力がね。アメリカのボルテージは117vと大した事無いのだが、問題はアンペア数だ。一般家庭でさえアホみたいにデカい冷蔵庫や食器洗い器、「コインランドリーかっ」って言いたくなるような洗濯乾燥機等の家電がドカドカ並んでるお国柄。アースが別になっているコンセントのお国の製品である。日本の貧弱な電源では容量が足りなくなりパイロット・ランプの点滅から始まりLEDやメーター類が動作しなくなりオーバーヒートして音がダレダレになってしまう。空冷ファンを増設したりラックごと扇風機で通風したりしてたけどやっぱダメね、すぐ壊れる。根本的に日本で使うには電気が足りない
定格消費電力が十分来ているって前提で作ってあるアンプだからね。日本で専用電源を引き回す事無く使うには無理が有る。

まぁ、それは業務用アンプに限らず普通のギター・アンプでも同じなんだけどね。皆何ボルトは気にして安物のステップアップ・トランス等(はっきり言って使わない方がマシなレベルの物が多い、音が汚れるだけ。)は使うけど何アンペアかは気にしてない。
いくら117vや240vに昇圧しても元の電源が90vに下がれば昇圧後も107vや230vに落ちるんだから。
これはジャンプしようとしているのに足場がフニャフニャみたいなもんなのだ。つまり日本では専用電源無しではどんなアンプでもまともには鳴らないのだ。
IMGP0103そんな時出逢ったのがAccuphaseだった。
突如リハスタに現れた営業マンが「良ければ試してみて下さい。」とPro-5(4ΩBTL1.200w)を持って来た。
アキュフェーズと言えばトリオから独立したハイエンド・オーディオで世界に名を馳せたメーカー。しかし国産パワー・アンプは使い勝手が悪いってのが私の印象だったので「あぁ、はいはい、休憩時に鳴らしてみます。」と生返事。
休憩時、面倒なワイヤリングをやり直し音を出した瞬間に我が耳を疑った。当時使っていたアメリカ製2.000wクラスのアンプを軽く凌駕してしまうパワーと解像度。膜が1枚剥がれたかのような音に痺れてしまった。そして現場で使ってみて感じたのが悪条件に強い事だ。もちろんパワー分の消費電力は必要なのだが「はい、私も日本生まれです、事情は判ってますよ…。」ととことん頑張ってくれるのだ。メーカーが言うには「70vまで完全動作保証、歪んでもいいのなら60vでも動作します。」って海外製ならとっくに火吹いてるレベルだよ。以来ずっとPro-5を全開で使い続けているが30年間ノントラブルである。IMGP5578

そんな変遷を経て現在のラインナップと成って居るのだが基本は変わってない。プリアンプはFender TBP−1でこれはツインリバーブ/ディアルショーマンの回路と同じ物。アレンビックF-2Bがツインリバーブの完全コピーなので私はずっとフェンダーのパッシブトーン回路を使っているのである。TBP-1の前はアレンビックのF-1X(F-2Bのモノラル版)を使っていたのだがエフェクト・ループにOn/Off機能が無いのとダイレクト・アウト、フルレンジ、ハイパス、ローパスの各アウトプットの位相がバラバラなんていい加減さに嫌気がさしていた。その点フェンダーは完璧だったね、当たり前のことなんだけど。実際楽器用のアンプはどのメーカーもギターだろうがベースだろうが、コンボでもスタックでも位相が滅茶苦茶な物が多いが、フェンダーだけは何時の時代のどのタイプも位相はしっかりしている。
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さて、80年代にコンポーネントの洗礼を受けた私は以来一般的なベーアンでは弾けなくなってしまった。普通のボトムラインならアンペグでも大丈夫だけどね。
なので今でもコンポを引きずって行く
3代目である現在のシステムはダウンサイジングと解像度/パワーを両立させた理想的なシステムなのだが、コンポーネントの宿命としてそれぞれが独立しているのでワイヤリング(結線)をしなくてはならないことだ。
せっかくクオリティの高い専用機器もそれぞれを繋ぐ結線が悪いと台無しになってしまう。なのでシールドやスピーカー、電源等ケーブル類には一番気を使う。

IMGP5050各ケーブル類を丁寧に巻取りケースに収めるにはちょっと時間がかかる。常に初期化しておかないと次に組む時に時間がかかるし忘れ物防止にもなる。
なのでライブ終演後、他のメンバーがノンビリくつろいでいたとしても私には一番忙しい時間なのだ。早く片付けて各ラックのフタを閉めないと運ぶことすら出来ない。

そしてステージ上には外したケーブル類や生身のベースなどが散乱している
そしてここからが今回の本題。

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そんな時に「写真一緒に撮ってもらえますかー?」とか「サインを…。」なんてステージに上がって来る人が居る。
ちょっと待ったぁー!それはダメだよ!
たとえ楽器が無かったとしてもステージに勝手に上がって来るのは絶対ダメ!そこは聖域なのだ。ましてやまだ片付け中の生身の楽器、機材等が散乱しているところにノコノコ上がって来るのは言語道断です。「ちゃんと気をつけてますよ。」なんてこと言ってもダメ。そう言ってる人の足がケーブルを踏んづけてたりしてる事の方が多い。

ステージ外から声をかけてくれれば気軽に応じます、もちろん(ただし大音量アンプで近接モニターした後は難聴に成って居るので小さい声では聴こえません)。でもねちょっと考えて見てよ、営業時間が終わってシャッター降ろしても、レジのお金計算してたり、窓口業務の整理をしたり、それを早く終えないと定時に帰れないなんてどんな職種でもよくあることでしょ。
営業時間は終わっていても一番忙しい時間はしばらく続くのだ。

そんな時一番困るのは「写真いいですか?」「はい、どうぞ。」と言ってからカメラやスマホをごそごそ探し出し「あれ、これどうやるんだっけ…。」とか、「サインしてもらえますか?」「はいはい、どうぞ。」といってから「ペンが無い…。」とかCD等のフェルムを剥き出す人達。その間こちらはずっと作業を止めて待ってなくてはいけない
私がもし誰かにサインを求めるとしたら、色紙やCDのフェルムを剥がし、書いてもらいたい場所を開いてキャップを外したペンを添えて渡す。それならほんの数秒で済むことだからね。それがマナーと言うものだ。

何もしていないでぼぅっとしている時なら少々無礼な態度で来られても対応出来るけど、閉店間際の一番忙しい時にステージに押し掛けて来るマナーの悪い人や「はい、どうぞ。」と言ってからバッグに手を突っ込んでゴソゴソやる人はちょっと困るな。
機材の搬出が終わり機材車への積み込み終了でドアを閉めて「お疲れさーん!」と成るまでは仕事は終わらないのだ。
それまで時間が無い?待てない?って人は…。ペンを持つだけで、シャッターを押すだけでいいように準備しておいてから声をかけてくれるか…もしくは諦めてください。ごめんなさい、スタッフ任せのバンドじゃないもんで。